第20章 after one year
「ふぅ…ただいま…」
リビングの扉を開いて明かりを付ける。
床に鞄を投げ捨てキッチンへと移動した。
冷蔵庫から缶ビールを取り、リビングへと戻る。
プルタブを引きながらソファーに腰掛け一気に中身を半分喉に流し込んだ。
「ふぅ…」
1人の空間でのいつもの日常。
残りのビールを飲みながら…壁に掛けた額縁の婚姻届を見つめた。
夫になる人『相葉雅紀』
妻になる人『櫻井翔』
俺の妻が…姿を消して1年が経った。
人生で1番長い1年。
あの日…どうして俺は翔と一緒に店に行かなかったんだろう。
側に居なかったんだろう。
あの日感じた胸騒ぎを…素直に受け入れなかったのだろう。
『家の用事を済ませてから行く』
君は…何処に行った?
今…何処に居る?
1年前と変わらない部屋。
1年前と変わらない日常。
でも…君が居ない。
君だけが…居ない。
書き置きも何も無かった。
君だけが…忽然と消えた。
「………翔…」
婚姻届に向かって呟く。
「翔。翔…」
昨日の事の様に思い出す…翔の笑顔。
思い出す度に…苦しくなる。
逢いたい…
逢いたい…
翔…
涙を拭いながら俺は空になった缶ビールをグシャッと潰した。