第12章 選択の時
ー翔sideー
医者「じゃあ舞ちゃん…元気でね。病院に着くまでは大人しくしてるんだよ?」
舞「はぁい♪」
「先生。長い間お世話になりました。勝手言ったのに丁寧な紹介状まで書いてもらって…」
医者「いえ。舞ちゃんがいい治療を受けられるなら協力しますよ」
「ありがとうございます」
医者「頑張って下さい」
看護婦「舞ちゃんまたね」
舞「ばいばい」
「本当にお世話になりました。失礼します」
俺は荷物を抱え、病院を後にした。
「舞苦しくないか?平気?」
舞「うん大丈夫だよ」
タクシー乗り場に着いた俺達はベンチに座りタクシーが来るのを待った。
あっという間にこの日が来た。
彼の元に…飛び込んで行く日が。
「翔さーん!」
声がした方を振り返るとこちらに向かってにのが走って来る。
「にの」
カズ「良かった間に合って…」
息を切らしながら俺に荷物を差し出した。
カズ「餞別。向こうで食べて」
「………東京ばな奈…」
カズ「恋しくなったらいつでも戻って来て下さい」
「………ありがと」
カズ「舞ちゃん。早く病気治る様に祈ってるよ」
舞「うん」
カズ「ショウさん…今までありがとうございます」
「俺こそ…にのが居て本当に助かった。ホストの時から…色々相談に乗ってもらった。昌宏さんの事も…雅紀の事も…。感謝してもしきれないよ」
カズ「そんな事…。ショウさんは俺の目標で…でもいつか越えたくて…結局越えられないまま店辞めちゃうんだから…」
「俺なんて直ぐに忘れ去られる。もうにのがナンバー1なんだから。頼むね」
カズ「………はい」
「ありがと」
俺はにのを強く抱き締め、頬にキスした。
離れると同時にタクシーが来たのが見える。
カズ「お元気でショウさん」
「にのも。何かあったら連絡する」
カズ「待ってます」
運転手さんに手伝ってもらい荷物をトランクに入れ、タクシーに乗り込んだ。
にのが外で手を振ってる。
舞と俺は手を振り返した。
運転手「どちらまで?」
俺は前を向き、運転手さんに告げた。
「………成田空港までお願いします」
運転手「了解しました」
そしてタクシーは動き出した。
昌宏さんの待つ…成田空港に向かって。