第12章 選択の時
「………太一先輩…」
俺は尻餅を付いたまま太一先輩を見上げた。
殴られても仕方無い。
どんな罵声も受け入れよう。
俺はそう思っていた。
だけど…。
国分「あー…すっきりした」
「………え…」
国分「情けない顔すんな。起きろよ」
いつもの笑顔で…太一先輩は俺の腕を掴んで起こしてくれた。
「………先輩…」
国分「正直さ…見た時は恨んだよ。お前にショウを取られたって思った。でもさ…言われたんだよね。カズに」
「………カズって…翔と仲良いナンバー2の?」
国分「そ。ショウの予約が取れない時にカズ指名して…すげー愚痴ったよ。そしたら言われた。『好きな奴の幸せ願う事も出来ない程度の器の人間に嫉妬する権利なんかない』って…何も言い返せなかったよ」
「………」
国分「勿論すぐ簡単には受け入れられなかったけど…やっと…納得出来た。それで決めてたんだ。もし相葉が打ち明けてくれたら…一発殴って終わろうって。2人の幸せ願おうって」
「太一先輩…」
国分「ギリギリだったけどさ…お前は言ってくれた。だから…2人の幸せ願ってる」
「太一先輩…太一先輩っっ!」
国分「おーおー。泣くなよー」
俺は泣きながら太一先輩に抱き着いた。
太一先輩は…優しく背中を擦ってくれた。
「でも俺…分からないんです。翔が…一緒に来てくれるか…来てくれないかもしれないっっ…」
国分「大丈夫だよ。信じろ。あんなに頑なな翔の心を掴んだのはお前だろ?信じろ」
「っっ…」
国分「きっと来てくれる。な?」
「ぐすっ…はい…」
国分「2人で幸せになるんだぞ。頑張れ」
「ありあとござます…ひぐっ…」
国分「ははっ、きったねぇなぁ鼻水拭け!」
ハンカチを差し出し鼻まで拭いてくれた太一先輩。
太一先輩…出会えて良かった…。
ありがとうございます。
貴方に出会わなければ…翔とも出逢えなかった。
感謝します。
そして俺は…東京駅に向かった。