第11章 別離
ー翔sideー
雅紀「………」
「………」
沈黙の続くリビング。
俺と雅紀はテーブルに向かい合って座っていた。
雅紀に…全て話した。
昌宏さんの事…。
昌宏さんを愛してた時の事…全て。
雅紀は…両手で頭を抱える様に肘をついている。
雅紀「………」
俺はただひたすら、雅紀の言葉を待った。
「………」
雅紀「………翔…」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
「………はい」
雅紀「舞ちゃんに…言われた事があるんだ。『昔お兄ちゃんが男の人連れてきたけど突然連れて来なくなった』って。それって…松岡さんの事…?」
舞…覚えてたんだ。
「………うん…」
雅紀「そっか…。その時から漠然と気付いてた。付き合ってた人が居たんだろうって。でも…まさか松岡さんだったなんて…」
「………ごめんなさい…言わなくて」
雅紀「謝る事ない。俺だって…昔付き合ってた人はいるし…過去の事だから話す必要ないと思ったし…翔が言わないのは過去の事だから聞く必要ないって思ってた。今は俺の事…愛してるって言ってくれたし…」
「うん…」
雅紀「でも…」
「………」
雅紀「どうして…嘘ついたの?松岡さんの所に泊まったって言わずに…にのの所に泊まったって…」
「………ごめんなさい…」
雅紀「………しかも…寝たなんて…」
「………ごめんなさい…」
雅紀「まだ…愛してるの?」
「違う…俺は雅紀だけ…雅紀しか愛してない」
雅紀「じゃあ何で寝たんだよ…!」
「………分からない…」
雅紀「………何だよそれ…」
「………ずっと…気持ちがくすぶってた…雅紀に逢うまで…でも…嫌だった…本当に…でも抵抗も出来なくて…」
雅紀「………」
「雅紀…本当にごめんなさい…」
雅紀「………直ぐに答えは出せない…ごめん」
「………雅紀…」
すると雅紀は立ち上がり、上着を脱いだ。
雅紀「知らない奴との浮気なら…耐えれたのかもしれない。俺にも問題があるんじゃないかって。でも…元カレは…そういう風には思えない。しかもあの…松岡さんなんて…」
「雅紀…やだ…」
俺は雅紀の腕を掴んだ。
雅紀「ごめん…考えさせて…」
「雅紀…!やだ…!」
俺は必死に雅紀にすがった。