第2章 指名
「太一さん…何言ってんの」
国分「俺…ショウが他の男に抱かれてるって考えると…頭おかしくなりそうになるんだよ」
太一さんは俺を抱き締めたまま離さない。
「………」
国分「ショウの事…愛してるんだ…俺じゃ客以上の存在にはなれないのかな?」
「太一さん落ち着いて…」
国分「落ち着いてるよ!」
いつも朗らかで優しい太一さんが声を荒げた。
国分「ずっと思ってた事だ。ショウを俺だけの物にしたい。こんな仕事辞めて欲しい」
「こんな…?」
国分「そうだろ…こんな…一日に何人もの男とセックスして…こんな低俗な仕事…」
一瞬で頭に血が上ってしまった。
部屋に俺が太一さんを殴る音が響く。
「何も…何も知らない癖に…勝手な事言うなよ!俺がどんな思いでこの仕事やってると思ってんだ!」
国分「シ、ショウ…」
「恋人でも無い癖に『仕事辞めろ』だ?ふざけんな。お前らみたいな金でセックスする低俗な人間が居るからこんな低俗な仕事が成り立つんだろ?感謝しろよ」
俺の怒りが止まらない。
太一さんは唖然と俺を見つめていた。
「セックス終わったんだからさっさと帰れよ。俺はまだ仕事あるんだから。低俗な仕事が」
国分「ショウ…悪かったよ。そんなに怒鳴らないでくれ」
「………あんたが出て行かないなら俺が出て行くよ」
俺は彼の荷物を押し付け、逃げる様に部屋を出た。
国分「ショウ!ショウ待って!」
太一さんが追い掛けてくる。
俺は振り返らずに控え室へと逃げ込んだ。