第2章 指名
ー雅紀sideー
あの夜から俺の頭の中は彼の事で一杯だった。
あの表情、声、仕草、全て。
頭から離れない。
また…逢いたい。
水商売の女に入れ込む男は何人か知ってるけど…まさか自分もそのうちの1人になるなんて。しかも男に。
国分「相葉どうした?」
「え?」
ハッと気が付くと太一先輩が目の前に立ってる。
俺は給湯室で急須を持ったままぼんやり立っていた。
「す、すみません…」
慌てて急須にお茶っ葉を入れてお湯を注いだ。
国分「具合でも悪いのか?」
「いえ…ちょっと考え事してて。今度の会議の事で」
国分「そっか…。あまり煮詰まるなよ?煮詰まったらリフレッシュしろ。そうしないと上手くいく物も上手くいかなくなるからな」
「あ、はい。ありがとうございます」
俺の肩をポンと叩いて、太一先輩は給湯室を出て行った。
………言えないよな。ショウさんに一目惚れしましたなんて。
太一先輩もそうとうショウさんに入れ上げてるみたいだし。
あの日…フロントで待っていたショウさんを見つけた太一先輩の顔…完全に恋してる目だった。
「………でも…78000円…か…」
悶々とした気持ちのまま、俺はお茶を持って給湯室を出た。