第1章 再会、そして
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「懐かしいなー! あったな、そんなこと! ベロンベロンだったよな、赤葦のやつ!」
喉をころころと鳴らして笑う木兎光太郎は、その逞しい腕に小さな宝物を抱いていた。
「あなたが及川君を呼ぶから大変なことになったのよ、まったくもう」
困ったように笑う木兎かおりもまた、その穏やかな眼(まなこ)にかけがえのない宝物を映している。
「パパ!ママ! おなかすいた!」
木兎夫妻が授かった彼は、今日で三歳。父親譲りの肌は白く、瞳は溶けた飴のようなゴールドだ。
「よーし! んじゃ肉食おう、肉!」
「えー……私はパスタのほうが」
「おにくー! おにくたべたい!」
新緑芽吹くセントラルパーク。
最近こちらに移住してきたばかりの親子が、その背中を三つ並べて歩いていく。
木兎光太郎がプロプレーヤーを引退した後のある日。春の訪れを感じさせる四月の、とあるニューヨークでの幸せの光景である。