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でも、そこがいいのです

第1章 *





「………」


彼は趣味に没頭しちゃうと周りが
見えなくなってしまう。
まぁ、そんな彼の背中を見てるのも好きだから
いいんだけどね。
今日は油絵を描いてるみたいだ。
独特な匂いが、部屋に拡がる。
どんな絵を描いてるんだろうな…
こっそり、彼に近付いて背中越しに見てみる。


「…向日葵?」
「、あ、居たんだ…」

思わず呟いた私の声で反応みせた彼に
苦笑する。
来ていたことにすら気付かなかったか。
彼はまたすぐに私から絵に視線を向けて、筆を紙に滑らした。
また沈黙が、部屋に訪れる。
でも意外と嫌いじゃないんだよね、これ。
不思議と落ち着くというか。うん、好きだね。


「コーヒー入れよっかな…」
「あ、俺も飲みたい。」
「ふふ、了解。」


私がいるということを認識したからかな。
独り言のつもりだった言葉を拾ってくれた。
それが、嬉しくて。
にやけながらコーヒーを入れに行った。



コーヒーを入れたマグカップを二つ持ちながら戻ると、彼はソファーに座っていた。
てっきり絵を描くのに集中してると思ってたんだけど。一先ず休憩って感じかな?
彼に近付いて、マグカップを渡すとふにゃりと笑ってありがとう、と言った。可愛いなぁ。
横に座って、まだ少し熱いコーヒーに息を吹いて冷ましつつちびちびと飲む。


「うん、美味い。コーヒー入れるの上手くなったよな、。」
「ありがとう。でも智がたまにいれてくれるコーヒーも美味しくて好きだよ。」
「ふふ、じゃあ次は俺作るよ。」
「うん!」
「…あ、なんか今閃いた!ごめん、ちょっと描いてくる!」
「はいはい、描いたら見せてね。」
「わかった!」


あー、すっごいいい笑顔だなぁ。相当いいのが閃いたのかな。あ、コーヒーいつの間にか飲み終わってる。空っぽになったコーヒーから、智を見る。まあ正確には智の、背中だけど。今度は何を描いてるんだろう。描き終わったら見せてくれるだろうから楽しみは取っときましょうかね。鞄から読みかけの小説本を取り出して、読み始めた。





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