第10章 いつになったら気づいてくれる?(一松)
帰り道。
私と一松君は夜道を、手を繋いで帰っていた。
「…………」
一松君の体温が、私の脈へ、呼吸をするように伝う。
寂しい夜空に、一松君が口を開いた。
一松「…○○はさ、彼氏とかいるの?」
彼氏……?
「えっ………一松君…もしかして………」
一松「ああぁぁぁもう言うなもう言うな!!あれ自分でマジ恥ずかしかったんだから!!」
一松君は私の言葉を大声で遮った。
一松「………それで、彼氏いるのかって聞いてんだけど。」
「……いないなぁ。彼氏は欲しいけどさ。」
彼氏が欲しいのは本当だ。
友達のラブラブカップルを見ると羨ましく思ったりする。
一松「彼氏欲しいの?なら俺が彼氏になる。」
え?
一松君は凄いことをさらっと当たり前のように言った。
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」
驚き過ぎて、繋いでいた手を離してしまった。
一松「うっさ、ただ彼氏彼女いないから付き合お、てだけじゃん?
それとも、○○は俺のこと嫌い?」
うっ…
そんな言い方されて「はい嫌いです」なんて言える訳ないじゃん。
「き…嫌いじゃないよぉ………」
私が答えると一松君は安心したかのようにふっと笑った。
一松「決まり。じゃあ俺と○○は今日からカレカノね。じゃあな、○○。」
いつの間にマンションの入り口についていた。
一松君の姿はもうなかった。
「なんなの……?」
一松君が変だ。
いつも無表情な一松君が笑ってた。
それだけじゃなく真剣に私に告白してきたのだ。
一松君は、私の事が、好きだったんだ。
「本当、鈍感なのかなっ…私って」
松野家にお泊まりに行ったときもそうだった。
嫌いな女の子と、一松君が寝る訳ないじゃん。
嫌いな女の子に路地裏で二人でいる訳ないじゃん。
何で気付かなかったんだろう。
あの時の一松君はどんな顔をしていたのか。
半ば無理やりに付き合ったことになる私達。
一松君のことは、嫌いじゃない、寧ろ好きなほうだ。
だけどその「好き」は男友達の「好き」であって……
私が本当に好きなのは、誰なんだろう。