第7章 七日目
「よし、戸締りもしたし……いこっか」
「えぇ!」
ナイトメアの方へと向かっていると、途中でアンジェラさんと会った。
「フィル君、こんばんは~」
相変わらず色の濃いサングラスを付けてはいるが、この前よりも、ずっと化粧も香水も薄くなっていた。でも、以前よりもずっと綺麗になった気がするのは、やっぱり僕の気のせいなのだろうか。
僕が手を振ると、アンジェラさんも手を振り返した。ミリィちゃんがぺこりとお辞儀をすると、アンジェラさんも嬉しそうに微笑んだ。
アンジェラさんと別れて、また道を進んでいく。
まだライトアップされていない僕の勤務場所は、いつもと何も変わらずに路地に建っていた。ナイトメアの裏口で、ミリィちゃんが「私はここで失礼するわ」と言った。
「あれ、ジェイさんには会わないの?」
「えぇ。またカフェ巡りしたいし。今の内に貴重な3時間を使うわけにはいかないでしょう? だから、一度私はここで海に戻るわ。後でまた迎えに来るわね」
うっ、今日もまたカフェ巡りかぁ。体力持つかな……。
一瞬心配してしまったが、彼女の楽しみで仕方がないという笑顔を見ているうちに、そんなことどうでもよくなってしまった。
別にいっか。ミリィちゃんが楽しんでくれるなら。
「いいよ、わかった。じゃあ、またあとでね」
「えぇ、ありがとう。お仕事、頑張ってね!」
「うん」
笑顔を返すと、ミリィちゃんはそれ以上に素敵な笑顔を返してくれた。
路地を急いで駆けていくミリィちゃんの後姿を見送ると、僕も気持ちを切り替えるために一つ深呼吸をした。
「よし、行きますか」
そしてまた、僕のいつもと変わらない一日が始まった。
―END―