第6章 六日目
「うぅ……恥ずかしいわっ。本当に穴に閉じこもってしまいたいぐらい……っ」
僕はそんなミリィちゃんに苦笑していたが、ハッと先ほど彼女の人間になる姿を見てしまった事を思い出して、慌ててその場に土下座した。
「ご、ごめん!」
「え? え?」
「ほ、ほらさっき人間の姿になる瞬間を……」
僕がしどろもどろと答えると、ミリィちゃんはカラコロとやわらかく笑ってくれた。
「あぁ、もう気にしてないわよ。私だってフィルに勘違いしてたし、お互いさまよ」
「で、でも……」
「別に大丈夫って言ってるじゃない。それよりもその……」
ミリィちゃんがそこで言葉を切って黙り込む。ど、どうかしたんだろうか。やっぱり凄く気にしてたとか!?
「あ、あの、ミリィちゃん……?」
「……フィルって、大きい方と小さい方だったら、どっちがいいのかしら……?」
「え?」
大きい方と小さい方って……な、なんのこと?
ぽかんとしている僕に、ミリィちゃんはぶつぶつと暗い表情で呟き続ける。
「……あんな貧弱な体を見られるなんて予想外よ……やっぱり牛乳かしら? 牛乳よね? それとも揉むとか? でも揉むほど大きくないし……」
「だ、大丈夫?」
ますます落ち込んで、頭の上に雨雲があるんじゃないかというほど沈みこんでいるミリィちゃんに、僕はそっと声をかける。
も、もしかして胸のサイズを気にしてるの……? てっきり、彼女の性格からしてそんなの気にしないと思ってたんだけど……。
「全然大丈夫じゃないわっ。他の人魚仲間は皆、そ、その大きいのにっ! フィルだって大きい方がいいんでしょっ!」
涙目でそんなことを言われるが、僕には答えられない。そんなデリケートな話に応えられるわけないって! ここで「大きい方」って答えたら、絶対に「やっぱりフィルも!」って返って落ち込ませちゃうし、逆に「小さい方」って言ったら、「私に遠慮してるのね!」って言われるに決まってるよー。