第1章 一日目
「探したわよっ。早く帰りましょう! もうすぐ3時間たっちゃうから!」
「う、うん……」
ミリィちゃんは僕の腕を取ると、何事もなかったかのように元来た道を引き返そうとする。そのまま問題がなければよかったんだけど、さっきまで僕に絡んでいた女の子たちの一人が僕の反対の腕を掴んでミリィちゃんを睨みつける。えっ。
「ちょっとあんた、何様だよ」
さっきまでのきゃぴきゃぴした雰囲気が一転して、どす黒いものに変わっている。僕がすくみあがっていると、ミリィちゃんはきょとんとした顔で彼女を見つめた。
「なんのことかしら?」
「だーかーら、あたしらの邪魔すんなって事だよ。あ?」
「邪魔? 別に私は彼と一緒に帰るだけなんだけれど……」
本当に不思議そうな顔で首をかしげるミリィちゃんに、相手はどんどん苛立ちを募らせていくのがわかる。それと同時に僕の腕を掴む強さが上がっていき、鈍い痛みが腕にどんどん追加されていく。
「それより離してくれるかしら? 彼が痛がってるんだけど。私も早くいかなきゃいけないし……」
「あんたが離せよ」
なんでこんなところで僕争奪戦が始まってるの? 2人ともタイプは違えど、顔立ちはいいけどさ! 全然嬉しくない! っていうかいつの間にかもっと野次馬が増えてる。本当にやばいよ、特にミリィちゃん!
僕がパニックに陥っていると、ミリィちゃんがふと何かに気付いたように顔を前に近づけてきた。その視線の先は、僕の腕を掴んでいる女の子の服。
「あら、あなた」
「は?」
「その服はあなたに似合ってないわね」
「――ッ!」
ストレートな発言に相手の女の子の表情が一気に赤くなった。ミリィちゃんはあまりそれに気付かないのか、じっと相手の服を見ている。
「胸が大きいのに、そういうチュニック系の服はよくないと思うわ。胸元を強調するために露出を高くしても逆に太って見えるしちょっと下品な感じだわ。もっとウエストに重点を置いてみたら? あと、それから……あら、なあに? フィル」
「ちょ、ミリィちゃん……!」
なんの躊躇いもなく言い続けるミリィちゃんに、僕は慌てて手を振って静止させる。
これ以上彼女を怒らせる事はしちゃいけない……って、あぁ、もう遅かったか……。