第5章 五日目
――ミリィちゃんの様子がおかしい。
次の夜、僕は控室でそう強く思っていた。
昼間に僕が起きてきて、浜辺に行ったら人魚姿の彼女がいたんだけど、挨拶すらしないで、目を速攻で逸らされたからね。
声をかけても、「今日はいい天気ね~」とか棒読みで呟いて、返事してくれなかったし……。
や、やっぱり昨日のことを気にしてるのかな?
「うわあああ、最悪だぁぁぁ!」
机に突っ伏して、複雑な気持ちになっているとジェイさんが奥の部屋から出てきた。手には沢山の書類が。
僕は首から頭を外すと、テーブルにおいて、「こんばんは~」とへなへなとした声で挨拶する。ジェイさんが訝しげに眉をちょっと上げた。
「あら? フィル君、どうかしたのかしら。元気ないわねぇ」
「あはは、ちょっといろいろあって……」
「ミリィちゃんのことかしら?」
「な、なんでわかったんですか!?」
思わず立ち上がって叫んでしまうと、ジェイさんはうふっと笑って「わかるわよ」と言った。
「フィル君が落ち込む時って、大抵ミリィちゃんが絡んでるでしょ? そうじゃなきゃ、フィル君はあまり落ち込んでないもの。わかりやすいの」
「そ、そうですか……」
僕ってそんなにわかりやすいのかな。
いや、もちろん仏頂面で冷静沈着だとは思っていませんけどね! でも、こうストレートに言われると……。