第44章 Laurel
『欲しい【しょう】はひとつだけだから…』
それって俺のことでいいんだよね?
珍しくストレートな物言いの智くんに顔が赤くなる。
そんな俺をニヤッとした顔で見てる智くん。
なんかちょっとお兄さんの顔をしてる…。
それがちょっと悔しかったりして…。
なのにさ…映画は俺から離れる時間が長いから嫌とか…。
もう…どんだけ俺の心を揺さぶるんだよ…。
ちくしょう…敵わないよなぁ…。
これがきっと惚れた弱みってやつだ。
もういいよ、勝とうなんて思わないから。
負けっぱなしでいいよ。
「残念会って…ベッドの上で?」
周りには聞こえない声で囁くと真っ赤になる智くん。
「…うん……そう」
「じゃ、張り切って振り入れしないとね」
「そうだよ…ちゃんと入らなかったら残念会じゃなくて補習だからね?」
急に強気になる智くんがかわいくて仕方ない。
「おじさんたち、なにやってるんですか?
さっさと歩く!」
ニノの声に急かされるように二人、小走りでスタジオに入った。
そうだね…貴方の演技に凄さは俺がわかってればそれでいいか?
そんなことを想いながら隣を歩く。
これからもずっと隣を歩いていくからね…。
【END】