第6章 お別れ。
空になった手のひらに何が残っているのか。
そんなことを考えながらカムクラは暁の顔を見た。
「……そう言えば、君は行かないのか?」
ふいに暁がそう問いかける。
「行きませんよ。僕はまだこの街に用があるんです」
「そうなのか、頑張れよ。……じゃあ、私はもう行くよ。今までありがとうな」
そう言って、暁は外へと続く線路を踏む。
「また、会おう。君も無事にこの街から出てくれよ。じゃあな……カムクラ君」
暁が右手を振りながら離れていく。カムクラは黙って小さく手を振り返した。
暁は少しずつ暗闇に溶け込み、やがてカムクラには見えなくなった。
「………………」
音もなくまた溜め息を吐く。
カムクラは地下鉄の外に出るため環状線に沿って歩き始めた。
地下鉄はまだ、崩れない。