第4章 truth
「翔…ここではね、前みたいなお仕事、しなくていいんだよ?」
翔は俯いてしまった。
「ここはね、前の場所とは違うの。わかるよね?」
こんなマッパで説得力もないけど…今、この話をしとかないといけない気がした。
「それとね、おじさんにしてたようなことも、もうしなくていいの」
翔の身体が強ばった。
こうなるのがわかってるから、今まで話さなかったけど…
でも、言うんだ。
愛してるから。
「俺は、お前を愛してるよ」
「…え?」
「翔のこと、愛してるよ。だから、大事にしたいんだよ…」
「かずくん…」
「おじさんがしたような、痛いこと、絶対翔にしたくないの」
ぎゅっと手を握った。
「恋人のえっち、しような?今日は準備ができてないから、だめだよ?」
「こいびと…?」
「うん。好きな人…愛してる人同士のことだよ」
「かずくんとぼく、こいびと?」
「そうだよ。恋人だよ」
「ほんと?」
「ほんとだよ。でも、お外で言っちゃダメだよ?」
「なんで?」
「みんな、びっくりするから」
「…わかりました…」
翔も俺の手をぎゅっと握り返してきた。
「こいびと…」
ふにゃっと笑った。
「ふたりきりなら、いくらでも言っていいよ…」
そう言って翔を抱き寄せた。
「愛してる…翔…」
「かずくん…ぼくも…あいする…」
「うん…愛し合おうな…」
俺たちはそうやって、いつまでもいつまでも抱き合った。
前の部屋みたいに寒くなかった。
ラブソファの上で、確かにその夜、俺達は恋人同士になった。
まるでそれが、前世から決まっていたことのように。
俺たちは出会った瞬間から惹かれ合っていたのだと、この時思った。
【truth end】