第23章 特別短編 その掌
”おまえのにーちゃん、くるくるぱー!”
”ちがうもんっ…”
「和音!準備できたの?」
「はあい!ママ」
ガチャっとドアが開けられて、ママの低い声が部屋に響き渡る。
「早くしなさい。翼が待ってるわよ」
「わおん!はやくいく!」
ママの後ろから翼が部屋に飛び込んできた。
「わかったよぉ…」
翼は、私のランドセルを持ったまま部屋の入り口でジタバタしてる。
別に翼が学校に行くわけじゃないのに…
「わおん!はやく!がっこ、がっこ!」
「わかったってば!翼!」
「こら!翼じゃないでしょ!お兄ちゃんって呼びなさい」
だって…翼はお兄ちゃんじゃないもん。
私、知ってるもん。
「うるさいなー…」
「和音!なに、その口のきき方」
「しらないっ…」
うちは…へんてこりんだ。
パパはお母さんみたいだし、ママはお父さんみたい。
それに翼はくるくるぱーだし…
「ねえちゃん、また怒られてやんの」
パパが小型化したみたいにそっくりなチビが私の部屋に首だけ突っ込んできた。
「うっさい!響!」
これは、1個下の私の弟という名のお邪魔虫。
いっつも私のことバカにして、邪魔ばっかりする。
「響!あんたも準備できたの?」
「俺はもうできてるもんねー」