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ROSE【気象系BL小説】

第20章 THE ROSE


”誰かがいう 愛は川みたい”


「あの…もしかして……」

振り向いた顔は、驚きの表情を作った。

「小原さん…?」

仕事で通りかかった神田の古書店街の片隅にある、古ぼけたレコードショップ。
店の前に置いてある植木鉢に水を遣っている人に見覚えがあった。

「風間…」

自分でも確信がないまま声を掛けたのに、まさかの本人だった。

ああ…と、思わず嘆息混じりの声が出た。

それほど、思いがけない出会いだった。

あれから一切、風間とは接触していなかった。
会うと、お互いに色々思い出すから、探すこともしなかった。

「入って…コーヒーでも淹れるから」

人懐っこい笑顔を浮かべて、背中を押されて店内へと連れ込まれた。

「え…?え…?この店…?」

カウンターの前の小洒落たパイプ椅子に無理やり座らされた。

「ああ…俺が経営してんの」
「は…?ヤクザは…?」
「すっぱり足洗ったよ」

微笑みながらカウンターの内側に入ると、コーヒーメーカーに水を注いでいる。

店内は古ぼけてはいるが、並んでいるレコードは埃一つ被っていない。
手入れの行き届いた店内は、客が少なくないことを物語っていた。

「もう何十年も前の話さ…」
「え…じゃあ、あの後すぐに…?」
「そうだね。翔が死んで…すぐ後にね」
「……」

随分、変わった。
優しい顔には変わりがないが、あの頃はどこか荒んでた。
なのに、いつも人を恋しがってるような顔して。
それでいて…決して心の奥底に触れさせないような、固いガードを感じていたのだが…

「小原さんは…ちょっと老けたね…日にも焼けたし」
「ああ…流石にね。もう年だよ」
「でもまだまだ若いよ。俺なんかもう10も年上に見られる」

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