第19章 Get It While You Can
それから暫くはボケっと過ごしていた。
何のために生きてるのか
何のために生きてきたのか
全くわからなくなった。
組事務所から、若い衆が来てくれて飯だけは作っていってくれた。
だけど、俺の腑抜けた様子に段々その足も遠のいている。
「入るぞ」
久しぶりに、人が来た。
見上げると、天井まで付きそうな大男が居た。
「松岡組長っ…」
「よお…俊、腑抜けてんじゃねえか…」
「す、すいませんっ…こんなきたねえとこに…」
「いいって、構うな」
上質なスーツの裾を払って、俺の目の前にしゃがみこんだ。
「俊…おまえにゃまだ盃やってねえけどな…ちょっと確認だ」
「…なんでしょう…」
「おまえ、足洗いたいのか?」
正直、もうどうでも良くなってた。
ガオが生きていた頃はガオの役に立ちたいから、早く松岡組の正式な構成員になりたいと思ってた。
そのために蛇頭との連絡役を買って出て、上海語を勉強したりもした。
でも…今となってはもう…
「そうですね…足、洗いたいです」
こう言えば、リンチが待ってる。
ついでに俺のこと、殺しちゃくれないだろうか。
そうなったら、楽だ―――
期待を込めて、組長の顔を眺めた。