第17章 Pearl
子供はまだ手を振っている。
不意に俺たちの後ろを指差した。
「おにーた…浮いてる」
「え?」
振り返ったけど、浮いてる人なんていない。
何を言ってるんだ…そう思ってまた子供を見ると、若い両親は顔が青ざめていた。
「すいません…時々この子…ヘンなこと言うんです…」
「え…?」
「気にしないでください」
そう言われると、余計に気になるじゃないか…
和也の方をみたら、子供が指差した方向を見上げてる。
「和也?」
「しょう…」
心臓が止まるかと思った。
お参りを済ませて、大通りに出てタクシーを捕まえる。
乗り込むとすぐに和也は眠ってしまった。
顔にかかった髪が邪魔そうだったから、どかしてやると微笑んだ。
…和也…
お前には見えているの?
翔がそばにいるの…?
俺達にはなにも感じることはなかった。
でも、時々和也は宙を見上げて微笑んでいる。
翔がいるのかな…
和也を見守っているのかな。
翔…
和也を連れて行くの?
俺達の手の届かないところから、手を振っているのか。
和也の頬に触れると、温かい。
それが…
和也にとって幸せなのか。
俺達にはわからなかった。