第16章 The Last Time
小原に指し示された部屋のドア。
呼び鈴を鳴らすけど、誰もでてこない。
ノブを回すと、簡単に開いた。
部屋に踏み込むと、そこには雅紀が横たわってて。
「雅紀っ…」
揺すったら、唸ったから意識がある。
ほっとして、部屋を見渡した。
ベッドの上で、和也が微笑んでた。
「和也…よかった。無事だったのか…」
近寄ると、ギクリとした。
和也の膝の上。
翔の頭が乗っている。
だらりと腕が垂れ下がっていた。
「翔…」
呼びかけても起きない。
潤と俺はそこで前に進めなくなった。
蒼白な顔。
まっしろな手。
「翔…そんな…」
潤が顔を覆った。
小原と翼が近寄ろうとした。
その時、和也がぎゅっと翔の頭を抱えた。
そして、また微笑んだ。
「しょうさん…あいしてる…」
和也の、翔を呼ぶ声だけが部屋に響いた。
しょうさん。
あいしています。
だからぼくをあいして…?
たくさんあいするから…
【END】