第16章 The Last Time
何日をそう過ごしていただろう。
起きては和也と戯れて。
また眠って。
ルームサービスで、適当にご飯を食べて。
部屋を一歩も出ないで、俺達はこんなことばかりしていた。
まるで、付き合いたてのカップルのように。
ある日、部屋の呼び鈴が鳴った。
小原と翼には、誰も部屋に入れるなと言われていた。
窓に近寄って、そっとカーテンを開けると、そこに居たのは雅紀だった。
「雅紀!」
思わずドアを開けていた。
「やあ!翔!」
雅紀の顔色は良くなってて。
「どうしたんだよ。お前。小出さんと一緒に来てたの?」
「うん。俺をね、こっちの病院に入院させるんだって言って。連れてこられたんだ」
「え?だってお前…そしたら、病院どうしたんだよ?」
「だって、治ったもん」
「え…?」
「俺、悪いところなんて、どこにもないもん」
そういうと、雅紀は満面の笑顔を俺に向けた。
言ってることがわからなかった。
「雅紀、お前…」
ふと手を見ると、光るものが見えた。
とっさに後ろに飛び下がったけど、俺の腕は雅紀に掴まれた。
「翔…シようよ?」
小首をかしげて、雅紀は微笑んだ。
手に持っていたのは、注射器だった。
「これね…こっちの人に貰ったの。とっても純度の高いコカインだって…」
「や…めろ…」
引き剥がそうと雅紀の腕を掴んだ左手は、無情にもすぐに振り払われた。