第4章 Half Moon
「サヴァン症候群…?」
「ええ。一時期、ドラマなんかで騒がれたと思うんですけど…」
「それは一体どういう症状なんですか…?」
テレビなんか見ないから、なんのことだかちっともわからなかった。
「自閉症児にまれにあることなんですけど、一部の能力が異常に発達することを指します。ドラマでは記憶力が発達している症例をとりあげていましたね…」
「かずなりくんがそれっていうんですか?」
「そうですね…極めて親しい人間にしか言わないんですけど…」
「あ…もしかして…」
「あ、櫻井さんもありました?」
「ええ…なんか…先回りするっていうか…」
「ええ…気持ちを先読みするんですよね…和也くん…」
「それが…サバなんとかってやつなんですか…」
「ええ。お医者さまにはそういう傾向があるって言われてます。ただし、親しくないとでませんがね」
そう言って先生はにこっと笑った。
あれから俺は毎日、バイトの帰りに施設に寄っている。
かずなりくんが…
和也が仕事が終わるのを待って、寮まで送るためだ。
そのくらいの時間の余裕はいつもあった。
それに…毎日会いたかった。