第13章 Move Over
「和也…」
右手で和也の髪を撫でる。
和也はずっと傷跡に唇をつけてる。
「しょう…あいしてる…」
涙が左腕を伝っても、和也は唇を離さない。
「どこにもいかないでぇ…」
左腕を抱きしめた。
「…いかないから、ね?もう、離さないから。和也…」
左腕が温かい。
和也に包まれていると、解毒されていくようで。
「しょうさんいないとしにます」
俺の目をみると、きっぱりと言った。
5年前には見えなかった強さ。
涙が溢れてるのに、その強い光に俺は目が離せなかった。
「しぬ…」
「わかった。わかったから、そんなこと言うな…もう、二度とないから…」
和也の頭を引き寄せた。
胸に抱きしめると、和也が泣いた。
その嗚咽が収まるまで、ずっと背中を撫でた。
和也が親指を咥えて、おとなしくなる頃…
和也の身体を起こして、キスをした。
ちゅっと唇に触れるだけのキス。
「和也、ここを出て田舎にいこうか?」
「いなか?」
「うん。親父の別荘あるから、貸してもらおう。そこでもっと身体を良くしような?」
「しょうさんとふたり?」
「そうだよ。ふたりっきりだよ?」
「はぁい!いきます!」
「よし、決まり」