第12章 Maybe
ドバイを経由して、カイロに降り立った。
実に10時間以上の旅だった。
荷物が流れてくる間、小原からの報告書を読みなおしていた。
不意に、後ろから手が伸びてきて俺の荷物を取ろうとしていたから、俺はその手首を掴んだ。
振り向くと、そこにはいたずらっこみたいな笑顔を浮かべた智がいた。
「智!?」
「びっくりした?」
気だるそうに立っているのが、まだ信じられない。
「な、なにしてんの!?」
「なにって…俺達も手伝おうと思って…」
「たち?」
「ちょっと、翔。荷物、行っちゃうよ?」
更に後ろから日本語が聞こえてきた。
「潤!」
振り向くと、ベルトの先を指差してる。
俺は慌てて荷物を取りに行った。
戻ると、呆然とした。
「いや、まじで…お前ら何してんだよ…」
「いや、だから俺達も手伝うから」
のんびりと智がいうと、一遍に力が抜けた。
「だからさぁ…中東やここらは、今、治安や情勢が悪いんだ…」
「そんなの知ってるよなぁ…?」
智が潤に向かって不思議そうな顔を向ける。
「なぁ…?日本に居る時、散々聞いたし」
「お前ら、本気なのかよ…」
「だったら、翔だって本気なの?」
いつもよりよく喋る智が、核心をつく。
俺は黙るしかなかった。