第10章 Cry Baby
小出さんが口を開いた。
「あー…そのことなんだがな…お前ら、なんか忘れてねーか?」
「あ」
ガオが頭を抱えた。
「もうな、avidは覆面バンドじゃなくなったんだからな、これからテレビの仕事もあるんだぞ?」
「わーかってるよ…」
「翔のリハビリ終わったら、アルバム一枚作ってもらわないといけないんだよ…」
「え?」
俺には訳がわからなかった。
「金、前借りしたんだ…もうエジプトに人やってる」
ガオが申し訳なさそうに俺を見た。
智と潤をみたら、苦笑いしてる。
雅紀がにがにがしく言う。
「俺達も金出したけど、足んなかったんだよ…侑李と榎本引き取ってきたから」
「お前ら…」
「翔、俺達も和也探すの応援してっから」
潤が微笑む。
「侑李みてたら、人事だと思えなくてな…」
智がまた侑李の髪を撫でた。
「和也とだぶるよな…」
潤も侑李の髪を撫でた。
雅紀も侑李を見て微笑んでる。
「翔、一緒にがんばろ」
ガオが力強く俺の手を握った。
この小さな手に、俺はいつも助けられてきた。
「ありがと…ガオ…」
例え、死んでいたとしても…
和也、お前に会いたい。
お前を抱きしめたいよ…
ポロッと出た涙を皆から隠すように拭った。