第9章 Farewell Song
さっきまであんなに蒸し暑かったのに、今は雨で煙ってる。
風間の枝の上海の根城に連れていかれた。
何人もの日本人や中国人のやくざ者が、私たちに親切にしてくれた。
それ相応の金は積んだ。
この5年。
だからこその扱い。
「ガオ、自白剤あるってよ。使う?」
風間が言ってきた。
「うん。廃人にしてもいいから、使って」
「わかった」
風間が奥の部屋に消える。
さっきから身体が震えて止らない。
ずっと悪いことしか考えられない。
雅紀を見ると、ゆうりを抱きしめたまま呆然としている。
多分、雅紀も同じことを考えている。
悪い予感…
榎本はロープでぐるぐる巻きにされて、部屋の隅で転がってる。
涙を流して、もう動くこともない。
顔が腫れ上がって、表情を伺うことすらできない。
「榎本…」
何の返事もない。
「あんた、ここで死ぬかもね」
そう言ったけど、やっぱり何の反応もなかった。
やがて、ぼそぼそと何か言った。
「死ねるなら…いい…」
こいつは死にたがってる…!
「風間ーっ!」
ドアをあけて、風間が入ってくる。
手には薬品ビンを握ってた。
「さっきの訂正。廃人にしない方向で」
「…わかった…」
そういうと、傍らの男に薬品ビンを渡した。
男はゆっくりと榎本に近づいていった…