第9章 Farewell Song
先生は、その場で首を刺して自分で死んでしまった。
多分、家族に累が及ぶことを危惧したんだろう。
そして、マスコミに宛てて榎本の父親と息子のやってきたことを暴露する手紙を送っていた。
先生も独自で調べていたから、和也の件以外にもたくさん、榎本の家、そして警察の汚職が明らかになった。
その全ての報道で、先生の名前は旧姓で報道されていた。
もちろん、殺人を犯したことは罪だ。
自分を殺してしまったことも含めて、大バカだ。
だけど、事実を知った世間の誰もが、亡くなった先生に同情的な目を向けた。
そして、翔にも同情が集まった。
翔はあの時…
榎本の父親に突進する先生の前に飛び出て、先生をやめさせようとした。
でも先生の包丁は、翔の脇腹を切り裂いた。
そのまま翔を突き飛ばして、先生は榎本の父親を何回も刺して、殺してしまった。
翔はその時、後ろにまともに倒れて頭を打ち付けてしまった。
それから、翔は目を覚まさない。
ずっと病院のベッドで寝たきりだった。
頭の傷は大したことがなかったが、打ちどころが悪かったのだと医者は言う。
いつ目覚めてもおかしくないし、このまま死んでしまうかもしれない。
そう言われた時、私の足から力が抜けていった。