第8章 Bye Bye Baby
そして、今。
先月、私は子宮がんの診断を受けた。
私は死ぬ。
もうすぐ死んでしまう。
そう、遠回しに言われた。
雷が当たったかのような衝撃が去ったら、不意に浮かんだ。
和也くんを取り戻そう。
そうして、彼の人生にお詫びをしよう。
そう思った。
櫻井さん…
彼さえ、和也くんを思っていてくれるなら。
施設も資金繰りの悪化により閉鎖が決まり、私が退職する日が来た。
家を出ていた娘と息子を呼び寄せた。
家族で集まり、私の診断結果を伝えた。
皆、青ざめて病院での治療を口にした。
でも、今更遅い。
ステージⅣに達していた。
子宮だけでなく、肺や腸にも転移していて。
肺に転移してしまうと、十中八九死ぬ。
余命4ヶ月。
これが医師の下した診断だった。
私は家族に手紙を預けた。
娘に頼んだ。
今から病院に行くから、と家をでた。
娘には、暫くしたら開けてくれと頼んだ。
娘は不思議な顔をしていたけど、こんな状況の母親の言うことを素直に聞いてくれた。
ごめんね…
ごめんね…
ちゃんとさよなら言えなくて。
愛してるよ…
幸ちゃん。
啓太くん。
あなた…ごめんなさい…
本当にごめんなさい…
和也くん…
もう会えないけど…
愛してるよ…
幸ちゃんや啓太くんと同じくらい愛してるよ。
もう一回、抱きしめてあげたかった…
ごめんね…和也くん…