第21章 銭湯へGo!
『攻めの湯』
見るからに真面目そうな青年。
確か暖簾を潜る前の会話では”翔君”などと呼ばれていたような気が…
まぁ、どちらでもいいでしょう。
仮にこの男を”翔君”だということにしておきましょうか。
翔君が手にしたボストンバックを床に置くと、その中をガサゴソと漁る。
一体何をしようとしているんだ?
も、もしや危険物ではないでしょうね?
だとしたら早急に注意をしなければ…
「あの…、もし?」
思い切って番台の上から声をかける。
「…えっと、俺ですか?」
そうだよ、君だよ。
今”攻めの湯”にいるのは君しかいないじゃないか?
「どうかされましたか?」
バックを漁る手を止め、私を見上げにっこり微笑む。
その瞬間、私の心臓がズキュ~ンと打ち抜かれた。
なんて素敵な笑顔なんだろう…
「いえ、何でもないです。ちょっとお風呂グッズをね?」
なんと!
銭湯には何から何までしっかり備え付けてあるというのに、自分専用の入浴セットを持参するなんて、律儀なお人じゃないか。
「あ、あぁ、それなら安心しました。あの、もし足りない物があったらここでも販売はしてますからね?
さりげなくセールストークを交えてみるが、
「は、ありがとうございます。どうやらその心配はなさそうです」