第17章 介護ってなあに?
まず案内されたのがトイレ。
車椅子での移動が必要な利用者のために、入り口は通常の倍ほどはあるだろうか。
それに内外に開くドアではなく、引き戸のタイプになっている。
これなら車椅子に座った状態でも、ドアの開閉は楽にできる。
手摺だって壁の至る所に取り付けられている。
山「施設内のトイレは居住室も含め、全てこの広さなんですよ?」
A「あ、俺分かったかも!」
N「何、びっくりするじゃないですか?」
A「これってアレでしょ? 車椅子もだけど、ヘルパーさんも一緒に入れるように、広くしてあるんでしょ?」
なるほど。
雅紀の言う通りかもしれない。
じゃなきゃこんな無駄に広いスペースは必要ないからね。
山「その通りです。介護の度合いによっては二人三人で介助することもあるので、なるべくゆとりをもって作ってあるんです」
替えのオムツなんかも用意されてる、ってことはここでオムツ交換もあるってことだろうから、それにはやはりこれぐらいのスペースは必要、ってことなんだろうね。
「ちょっとちょっと、アンタ達! そこどいてくれないかねぇ。あたしゃもう…」
声に振り向くとそこに杖を突いた、白髪のお婆さん。
「あっ…!」
良く見ると足元に水溜りのようなものが出来ている。
山「あらあら、一子さん。えっと松本さん、でしたっけ? 職員を呼んできて貰えるかしら。それから相葉さん、雑巾とバケツ持ってきてくださる?」
山田さんが一子さんを不安にさせない様に気を配りながらも、実に的確に指示を下す。
二人も山田さんの指示に従って動き出す。