第14章 ♠星に願いを…
教室に入ると、思い思いに遊び始めようとする子供たちに声をかける。
「みなさん、おはようございます」
『おはよ~ございま~す!』
うん、相変わらず元気がいい。
「今日は何の日か、知ってるかな?」
『たなばた~』
よしよし、日頃の教育の賜物だな。
「そうだね。じゃあ今日は、みんなの作った笹飾り見てみようか~」
『は~い!』
色帽子を被り、子供たちが我先にと園庭へ駆け出す。
それぞれ気になった笹飾りの前で足を止める子もいれば、ひたすら自分の笹飾りを自慢する子もいる。
子供ってほんと、面白い。
さて、俺も子供たちの短冊見させてもらおうかな。
「この黄色い短冊は…和くんか。どれどれ…?」
”おかねいっぱいためてしょせんせとけっこんできますように”
はは、和君らしい…かな?
「ん? この緑のは…まーくんか…」
”しょーせんせいがオレのぎょうざをたべてくれますように”
うんうん、餃子は好きだよ。
いつか食べさせてもらうことにしよう。
「で、紫が潤君ね」
”しょうせんせいがおれのあかちゃんうんでくれますように”
いやいや、俺”男”だしね?
ごめん、赤ちゃんは無理だ…
「あれ? 智君が赤を選ぶなんて珍しくない?」
こ、これは…
出来ることなら園児にしては上手すぎる”絵”を、読者の皆さんにも見て頂きたい…無理だけど…
これじゃあまるで暗号だな。
これは、”俺”か?
で、こっちが”智君”?
なんだろうけど、なぜ接吻を?
それにしても、どの子も俺のことを書いてくれて…
先生はこんなにみんなに愛されて、嬉しいよ…
俺は残っていた短冊に願い事を書き込み、笹に括り付けた。
”子供たちの願いが叶いますように”
ってね。
おしまい