第13章 幸福
〔二宮side〕
朝日が、カーテンの隙間から、
隣で眠る愛しい人の肩を優しく包む。
まだ覚めきらない頭で、
その肩を見ていた俺は、
その光になりたくて、
そっと光に掌を重ねてみる。
すると、当然、俺の手は光を遮って、
愛しい人の肩に影を落とす。
その瞬間、覚めなかった頭が一気に覚める。
俺の存在が、光の中にいる彼に、
影を落とす錯覚。
静かな寝息を立てる翔の肩が、
ゆっくり上下する。
(ああ...この世界に、
2人だけでも構わない。
この肩があれば、もうなにもいらない..)
俺は思わず、翔の背中に抱きつく。
櫻「...う..ん...おきた.の..?」
ゆっくり翔は俺の方に振り向く。
「ごめっ!!起こしちゃった!!」
翔はニッコリ笑って、
俺をすっぽり包み込む。
肌と肌が触れ、
その心地よさにうっとり目を閉じる。
温かいその感触が、
今見た、影の存在を忘れさせてくれる。
人は、幸せすぎると、あえて、
その周りに影を探そうとして、
不安になるなのかもしれない。