第10章 半月
俺たちはバスローブを羽織り、
コテージのデッキに並んで腰掛けた。
さっき、見事な夕陽を見せてくれた場所。
今は、静かに凪いだ波の音だけが
妙にアンバランスに大きい。
空には、半月が辺りを照らしていた。
どんなに頑張って照らしても、
所詮は半分の光....
満月には、かなわない。
何だか、俺たちみたいだ。
社会の中では、正当に扱われることはない。
趣味や趣向のひとつ...くらいにしか、
理解されてないのが
本との所なんじゃないかな...
俺たちがつき合ってる...
って認めた時点で、
『アイドルグループ“嵐”は終わりかな..』
女の子とのゴシップもダメ。
じゃあ、メンバー内ならいいのか?
っていうと、それはない...
男だとか女だとか、そんなの関係ない...
だいぶ認められてきたとはいえ、
男性同士の結婚が
認められていないこの国じゃ、
俺たちは、異端でしかない...
ハーフムーンはやがて満月になるけど、
俺たちは、どこまで行っても、
満月にはなれない...
ニノ「さっきから、何考えてるの?」
黙ったままの俺に、ニノが聞いた。
月が綺麗だとか、波がどうだとか、
そんなこと一言も言わず、
ニノもずっと黙ったままだったのは、
同じことを思っていたのかもしれない。