第35章 深夜の訪問者
10㎝先にある彼の目は、
優し気に細められていた。
「……」
「かず…キスさせてください…」
「………」
もう(*´з`)
何でそんなこと言うんだよ~?
いつもは、断らないでどんどんするくせに!!
………翔…
こんなに暗い中で、僅かな光を映して、
彼の瞳は、キラキラしていた…
星……みたいだ…
「キス…して?」
口元を少しだけ上げて笑った翔は、
ゆっくり俺に近付いて、
触れるか触れないかの優しさで俺の顎を上向けた。
「目…閉じて…」
………ドキドキが…
翔に絶対聞こえてるんじゃないかな?
何百回、何千回……
数え切れないくらいに唇を重ねた。
でも…なんでこんなに、胸が苦しいの?
翔が好き……
ずっと一緒にいるのに、
ずっと好きだって…
愛してるって言って貰ってるのに…
今夜は胸が押しつぶされそうに苦しくて、
身体が震えるくらいに翔が愛しい…
焦らすように、
ゆっくりスローモーションの映画のようなスピードで重なった唇は、
そのままそっと優し過ぎる強さで、
その上を擦った。
ああああぁぁ……
翔……
愛してるよ…
愛してるんだ!
触れるだけのキスが、俺の劣情を煽って、
思わず涙が溢れて頬を零れ落ちた。
「かず…泣くなよ…」
翔の低音が、俺の脳髄までも痺れさす…
翔と一緒に歩くようになって、
隣に並んでいるのが、当たり前になって、
だけどね。
それって凄い事なんだって、
今でも思う。
この人が…
櫻井翔が、
俺のパートナーなんだな…って。
「翔…愛してます…」
「かず…愛してる」
「翔…」
「かず……」
生茂った木々が、
眠らない町、東京の灯りから、
俺たち二人を隠してくれている。
ぽっかり空いた都会のオアシス。
俺たち二人は、
いつまでもいつまでも抱き合っていた。