第35章 深夜の訪問者
帰りのタクシーの中、
翔は運転手から見えないように、
シートの上で俺の手を握った。
少し恥ずかしくて、ドキドキしながら
翔を見ると、知らん顔してスマホを弄っていたけど、
チラッと俺の方を見て、
こっそりウインクした。
もう~///
なんで?
どうしてそんなにカッコイイの??
俺をドキドキさせる技、
完璧に心得てるんだよね~…(≧▽≦)
いつもそれに翻弄され、
ドキドキさせられているけど、
それが、何だか凄く、温っかい……
小指を絡めると、
翔は俺の方は見ずに、
口元だけを少しだけほころばせた。
早く家に帰って、抱き締めて欲しいな…
翔にすっぽり包まれて、
今日の幸せを噛みしめたいよ…
そんなときに限って、
タクシーは停まってしまったまま動かなくなった。
どうしたのかな?
翔と顔を見合わせると、
「あ~…事故だな~こりゃ、暫く動きそうもないですね~」
嘘でしょ??
このままここで~??
1分でも早く帰りたかったのに~(*´з`)
「メーターは止めますけど、どうしますか?」
運転手は、帽子を目深に被った、
翔に至ってはマスクまでした俺たちの事、
嵐だって気付かないらしい…
「じゃ、ここでおります…」
翔がそう言うと、そこで初めて、
運転手はルームミラーで俺たちを見た。
「そうですか~?すみませんね…
ここからだと、最寄りの駅は~…
といっても、この時間じゃ、電車は~」
「大丈夫です。何とかしますんで…」
翔が代金を払って、俺たちは夜の街に降り立った。
事故のせいで、
いつもはそうでもない道は、車が並んで
身動きが取れなくなっていた。
さて……
ここ、どこかな??