第35章 深夜の訪問者
【 翔side 】
「さあ舞い上がれ~、夏疾風~🎵
🎵🎵~🎵🎵🎵🎵~🎵🎵」
俺はご機嫌に風呂掃除をしていた。
今日は取材の仕事がかなり巻きで終わって、
俺は明るいうちに帰ってきた。
帰り支度をしていると、大野さんに
「翔ちゃん、ご機嫌だね…」
と言われ、自分が浮かれていることに初めて気づいた。
「えっ?そうかな~?」
「ニノが待ってるんでしょ?」
「あ、いや…今夜は…」
カズは今日、木村くんとご飯に行ってる。
ふたりで映画をやってからというもの、
すっかり彼に気に入られたカズは、
プライベートでもお酒を飲みに行ったり、
洋服や靴を貰ったり…
今までからしたら、考えられない急接近だから、
戸惑いもあるけど…
まあ、俺には少し羨ましくもある訳で。
カズだから…
人懐っこくて、人の懐にするっと上手に入り込めるから…先輩の俳優さんや、所謂大御所と呼ばれる人たちからも可愛がられている。
それ自体は悪い事じゃない。
悪いことどころか、好ましいと言える。
どうしても、変に気を使ってしまい、
近付いていけない俺にとっては、
羨ましい限りだ。
んで、今日も、
『木村くんに西麻布のイタリアンに誘われたんだけど、どうしよう?』
とLINEが着た。
今日はカズはオフで、
夕ご飯を作って待っててくれることになっていた。
だけど、断れっていうのも大人げないし、
『いいよ、行っておいで!いつもは食べられないような高級なんもん、ご馳走になって来いよ!』
と返事をした。
『知ってるくせに…高級なものは食えないから(:_;)』
そんなカズの返信に、ニヤニヤしていた昼間。
大野さんは、そんな俺を覚えていたらしくて。
帰ったらカズが待ってるって思ったらしい。
「今夜は木村くんとご飯行ってる」
素っ気なくそう言うと、大野さんは俺の背中をバシッと叩いて、
「大丈夫だ!!あいつは翔ちゃんのもんだから!!」
と言った。