第34章 輝くライトの中へ
【 翔side 】
ドームの中が、異様な空気に包まれる。
みんな、次の曲が何なのか知ってる。
知ってるから、その期待感にどよめく。
制御されたペンラが消え、真っ暗な会場。
そして次の瞬間、悲鳴とも歓声ともつかない声が二人を迎えた。
カズと相葉くんのユニット曲が始まったんだ。
スポットライトに浮かび上がった二人は、花道の両端から、交互に歌いながら徐々にその距離を詰めて行く。
俺は、次の曲のために着替えてメイクを直してもらいながら、小さなモニター越しにカズの姿を見つめていた。
札幌ドームでスタートした今回のツアー。
今日は2度目の東京ドーム。
昨日は相葉くんの誕生日企画もあり、今日はその翌日の中日。
俺は静かに目を閉じた。
今まさに、ステージ上ではどんなことが行われているのか、目を瞑っていても手に取るように分かる。
息の合ったペアダンスに、会場のボルテージも最高潮に達する。
カズの透明なハイトーンに、相葉くんの声が重なる。
…もう慣れた。
俺が…俺たちが狙ったように、『にのあい』のユニットは、最初から注目の的だった。
縺れあい、絡み合い…
見る角度によってはキスしてる様にしか見えないダンスは、寸分たがわぬ角度と隙間で、絶妙な色気に包まれていく…
まさに『息ぴったり』という言葉通りのユニット曲。
「ふう~っ…」
俺は小さくため息を吐いた。
カズと一緒になって、こんなに嫉妬深い自分に気が付いた。
ホントはね?
誰も、カズに指一本だって触れて欲しくない。
出来ることなら、家に置いて、自分だけを見つめて、自分だけのために笑っていて欲しい。
カズだって、外に出るのホントは好きじゃないしさ…
まあ、そんなことができないことぐらい、
分かってるけど…