第8章 不安
〔二宮:side〕
そりゃそうだろう。
元々翔ちゃんはこっち側の人間じゃない。
俺が引きずり込んだんだ。
俺のことを好きだと言ってくれるけど、
抱いて肌を重ねてくれるけど、
翔ちゃんはホントはノーマルなんだ。
嫌いになって別れたんじゃない、
『キツい』と泣きそうだった翔ちゃん。
その彼女がまた、翔ちゃんの近くに来る。
最近は、若かったあの頃と違って、
簡単には共演者に手を出すことも
なくなっていたとはいえ、
思いを残してるんじゃないか?
翔ちゃんと離れたことを、
彼女が後悔してたとすれば...
そんなことを考えると、
怖くて仕方なくて、
でも、聞くことなんかできない。
不安が大きくなればなる程、
俺はその不安を胸の奥にしまい込んだ。