第24章 十戒
〔櫻井side〕
日本へはニューヨーク経由での
フライトになる。
早朝....
マイアミまで、俺は大野さんと並んで、
ワンボックスの後部座席に座っていた。
..........
夕べ、全てが終わった後、大野さんは俺に、
「翔ちゃん、ありがとう...」
とそう言った。
「.....これで、ホントに、忘れる....」
とも言った。
『ありがとう』も『ごめんね』も、
なんか違う気がして、
答えあぐねている俺に、
大野さんは静かな笑顔で話してくれた。
俺と二ノとのこと。
笑って見ていたけど、苦しかったこと。
俺に、はっきり『NO』と言われ、
自分では吹っ切れたと思っていたけど、
顔を合わす中で、
いつも苦しくて、
『忘れなきゃ//』と思えば思うほど、
自分が自分でいられなくなるようで...
自分が変わる....
きっかけが欲しかった...と....
そこに入ったのが今回のロケの話。
初めから、俺への気持ちを
終わりにするために、こうしたいと...
『一回だけの....ひと晩だけの、
俺との思い出が、欲しかったんだ...』
と.....
大「二ノと翔ちゃんのことは、
これからも応援する...させて...
だから、二ノには言わなくてもいい...
翔ちゃんは、忘れていいんだ。
その分、おれが覚えてるから.....」
そう言った大野さんの顔は、
もう泣いてなくて、寧ろ、
泣きそうなのは、たぶん、俺の方....
俺は、何もいえないまま、
触れるだけのキスをして、
やっと、いろんな意味を込めて、
「ありがとう....」とそう言った。