第15章 秘密
不意に、大野さんが顔を近づけたかと思うと、
俺に唇を重ねてきた。
その瞬間が、
まるでスローモーションのようで、
全く現実味がなかった。
大野さんの唇が優しく動いて、
俺の唇を啄み始めたところで、
俺は我に返り、大野さんの胸を押した。
大「...キスだけ..だから...」
そう言ってまた顔を近づけてくる
大野さんの髪の香りに、
一瞬、ニノの笑顔が浮かび、
今度はしっかりとした拒絶のために、
立ち上がった。
「..こんなの...ダメだよ...」
泣きそうに眉毛を下げて
俺を見る大野さんの顔がたまらなくて、
俺は顔を背けて、
「帰る...」
とその場から、逃げ出した。
(なんで、そんなこと言うんだよ...)
俺はまだ混乱する頭を整理出来ず、
夜の町を当てもなく歩き出した。