第63章 修復
ー翔sideー
バタン、とホテルの部屋の扉を閉める。
そのまま俺は…扉にもたれたままズルズルと座り込んだ。
暗闇の中、静まり返るホテルの部屋。
俺はぼんやりとしながら月明かりが差し込む窓を見つめた。
そっと…唇に触れる。
さっきの感触が…忘れられない。
初めてだった。
人生で初めて…潤以外の人を…受け入れた。
夫以外の人と…キスをしてしまった。
にのとはよくしてるけど…あれは挨拶。コミュニケーション。キスではない。
「何…してんだろ…」
ポロリ、と涙が零れ落ちた。
潤がした事は許せない。
もう別れるしかない。
だったら…こんな事してもいいのだろうか?
たかがキス。
けれど…潤のした事は?
元カノとのセックス。
気持ちのないセックス。
俺に思いを寄せてくれた人とのキス。
気持ちの篭ったキス。
どちらが重いのだろう。
どちらもない。
俺も…潤を裏切ってしまった。
もう責める資格はない。
「っっ…ふ…」
声を上げて泣いた。
後悔と懺悔に染まりながら。
潤を愛してるのに。
斗真の言葉が…腕の中が…唇が温かかった。
裏切ってしまった。
俺は…どうすればいい?
ただ今は泣く1人で事しか出来なかった。