第10章 誕生
ー翔sideー
「ふっ、ふっ、ふー」
修「ふーふー」
「ふっ、ふっ、ふー」
修「ふーふー」
「ぶはっ。もう修!気が散って出来ないってば」
俺はソファーで体勢を崩して隣に座る弟・修の頭を撫でた。
修は楽しそうにケタケタ笑ってる。
翔母「翔。潤くんは今夜も来れないの?」
「うん…。あいつ今はMAXで忙しいから」
2008年4月18日。
出産予定日からもうすぐ1週間が経過しようとしていたこの日。
映画の取材やテレビ出演で朝から晩まで働き詰めの潤は俺を心配して暫く里帰りする様にと言われ、俺はここ数日実家で過ごしていた。
初産は遅れるもんだと母さんに言われたけど…そろそろ産まれてくれないとなぁ…。
あまり遅れても赤ちゃんが育ち過ぎて難産になるって言うし…。
身体も重くて思う様に動けなくて辛い。
何より…俺も潤も早く会いたいんだ。
「今は『隠し砦の三悪人』の取材だろ?それが終わったら『花より男子』があるから…」
翔母「大変ね」
「仕事終わったら毎晩電話くれるけど…疲れてるみたい。口には出さないけど…出産立ち会えるか分からないから辛いだろうな…」
翔母「タイミング良く立ち会えれば良いんだけどね…」
「………たまにさ…怖くなるんだ。潤が居ないって考えると…怖い。本当は…隣で手握ってて欲しいんだ」
翔母「………」
「潤が居ないと…俺駄目かも」
翔母「しっかりなさい!」
「いって!」
母さんに勢いよく背中を叩かれる。
翔母「『母は強し』よ。気合いよ気合い!」
「分かってるよ…」
翔母「母さん立ち会おうか?」
「は?何でだよ」
翔母「だって潤くんに宜しくって頼まれてるし…」
「母さん居ると集中出来なそう」
翔母「何よそれ」
「ははっ」
笑ってると玄関が開く音がする。
翔母「あら。お父さん今日は早いのね」
「だね。俺見て来る。よいしょ、っと…」
俺はお腹を抱えて起き上がり、玄関へと向かった。