第57章 友情と愛情
近寄って来る女の子達を振り払いながらタクシーを掴まえ乗り込む。
そのタイミングでスマホが鳴り出したから運転手に行き先を告げながらスマホを取り出した。
「もしもし」
潤『斗真』
「………うん」
息を付きながら背もたれにもたれた。
潤『今日ありがと。お見舞い』
「いや…」
数時間前に聞いた声なのに…懐かしい様な気がした。
その声に…俺は現実に引き戻される。
潤『今撮影なんだろ?大丈夫なのか?』
「ああ。明日の朝には戻るけど」
潤『ありがとな』
「いいって…」
潤『………少し話したかったのにさっさと帰りやがって』
「ふふっ、悪い」
こうして憎まれ口を叩くのも…潤だから。
そう…潤は親友。
昔から変わらない。
人懐こくて真っ直ぐで素直で…情の深い男。
………潤だから…俺は諦めた。
潤なら…翔くんを笑顔にしてられる。
そう思ったから…。
潤『斗真?』
「え?あ、ごめん」
潤『疲れてるのに悪いな』
「だから…気にするな。翔くんと…お前の事も心配だったから」
潤『そっか…』
「今だけだ。きっと…また翔くん笑顔になれるから。お前が居れば。だから…俺が言えた義理じゃないけど…翔くんの事頼むな」
潤『………うん。ありがと。撮影終わったらまた飲もうな』
「ああ。また連絡する」
潤『おやすみ』
「おやすみ」
電話を切り、夜景を見つめる。
「………これでいいんだ…」
そう呟きながら俺は外の景色をぼんやり見つめた。