第8章 休業生活
ー潤sideー
「翔。準備出来た?」
声を掛けながら俺は楽屋を覗いた。
翔「うん。後ネクタイだけ」
姿見の鏡の前で翔がネクタイを締める。
その後ろに立って翔を抱き締めた。
翔の身体が固い。緊張してるのが俺にも伝わって来る。
今日は今年最後の『NEWS ZERO』の放送であり、翔の今年の、そして産休前の仕事納めになる。
「精一杯やってきて。俺ここで見てるから。この子もね」
手を伸ばし、膨らみが目立ってきたお腹を撫でた。
翔「うん。行って来ます」
ガッツポーズをしながら翔は部屋を出て行った。
「よし、後はメンバーの準備か…」
携帯を取り出し、他のメンバーに連絡する。
産休前、最後の翔へのサプライズ。
また泣かれたらどうしようか。考えるとにやついてしまう。
しばらくすると、ノックと同時にマネージャーが楽屋へと入って来た。
翔マネ「お疲れ様です。花束持って来ました」
「ありがと」
翔マネが持って来た花束をテーブルへと並べる。
翔マネ「櫻井さんびっくりしますよ。最後にメンバー全員で登場なんて」
「だな」
この日まで、翔は今まで以上に真剣に仕事に取り組んでいた。一度も弱音を吐かずにこなしてきた。
またここに戻って来れる様に。
だから俺も守ろう。翔が戻って来るその日までこの場所を。
俺は立ち上がり、着替えを始めた。