第7章 想いの交差
ー翔sideー
「あれ、潤は?」
潤にコーヒーを入れてリビングに戻って来ると潤の姿は無く、修だけがソファーで静かに寝息を立てていた。
舞「トイレじゃないの?」
そう言う舞の言葉に促され、俺はリビングを後にした。
「居ない…」
トイレにも潤は居ない。
何も言わずにウロウロするなんてしないのに。
ふと、玄関に目をやると俺の足が止まる。
「え?」
まだ帰ってない筈の父さんの靴が揃えてあった。
姿を見せない父と夫 の姿…。
「まさか…」
俺は慌てて二階へと足を運んだ。
階段を上がって一番奥の部屋に父さんの書斎はある。
近付いて行くと案の定、聞き慣れた2人の会話が聞こえる。
俺は気配を消して、少し扉を開いた。
翔父「今すぐ私を納得させるのは…諦めなさい」
父さんの穏やかだけど、強い声が聞こえてくる。
潤「………」
2人はテーブルに向かい合わせに座って見つめ合っていた。
どうしても…駄目なのかよ。
部屋に入ろうとすると、父さんが続けて話し出した。
翔父「舞にも同じ事は伝えてある」
舞…?
潤「舞ちゃん結婚するんですか?」
翔父「いや、まだ考えてないとは言っていた。でも…子供を嫁がせる父親とはそういうものなんだ、松本くん」
潤「………」
翔父「翔は…あの子は…舞が産まれるまではやんちゃで甘えん坊だったが…妹が出来てからは余り我が儘を言わなくなったんだ。まだ4歳だったが…兄という自覚が強く芽生えたんだろうな。聞き分けも良くなったし舞の面倒をよく見てくれた。修が産まれてからもそれは変わらなかった。部活で疲れていてもよく面倒見てくれてたよ。勉強もきちんとやっていた。愚痴1つ言わずに」
潤「………自分に人一倍厳しい人…なんですよね」
翔父「そうだな」
「………」
翔父「私は翔の努力を見てきた。反対しても芸能界辞めなかった。認めてもらう為に翔は全力で頑張った。学業も仕事も。決して弱音を吐かなかった。私はそんな翔をずっと見てきたんだ。だから…翔が可愛いいんだ。幸せになってもらいたいんだ」
父さん…。
翔父「松本くん。君にそれが出来るのか?」
潤「………」
潤は黙って父さんを見つめ返した。