第7章 想いの交差
「と、と…ま…んんっっ…」
リビングに荒い息と口付けの音が響いている。
斗真の唇から逃れようとしても強い力で抱き締められ、それはかなわない。
「ふぅっ…ん…や…」
すると一瞬彼の唇が離れ、そのまま至近距離で俺達は見つめ合った。
斗真「ごめん…これで終わりにするから…だから逃げないで…」
「………」
目の前の斗真は…酷く…辛そうな表情をしていた。
俺の事…ずっと好きだったと言った…。
でもそんな素振り一度も見せずに…俺とも潤とも変わらずに接してくれた…。
どんなに…キツかっただろう。
そう考えると…もう抵抗は出来なかった。
そしてまた近付いてくる斗真。
俺は目を閉じ、彼を受け入れた。
「ん…んっぅ…」
重なると同時に斗真の舌が滑り込んで来る。
初めて…潤以外の人間と触れ合った。
潤以外の指…潤以外の腕…潤以外の…唇。
きっと斗真はこれからも変わらずに俺達の側に居てくれる。
だから…秘密にしよう。
今日…今この瞬間だけの…斗真とのキスを。
「ふぅっ…はんっ…」
しばらく俺の口内を侵食した後、糸を引きながらゆっくりと唇が離れた。
「はぁっ…はふっ…」
そのまま再び斗真の腕の中へ。
斗真「ごめん…ちょっと激しすぎた」
息を整えながら、俺はフルフルと首を振った。
「………ごめん…俺は…ここまでしか…」
斗真「分かってる。ありがとう…逃げずにいてくれて」
おでこに優しいキスを落とした後、彼はようやく俺から離れた。
斗真「じゃあ…帰るね」
「………うん…」
気まずいまま、俺は斗真を玄関まで送った。
斗真「じゃあ…潤によろしく」
「うん。気を付けてね」
斗真「ありがとう」
「………またね斗真」
俺にはそれを言うのが精一杯で…他に言葉が思い浮かばなかった。
斗真「うん。また…来るよ」
斗真は笑顔で出て行った。
扉が閉まると同時に、俺はその場に崩れてしまった。
「………」
そっと、唇に触れる。
斗真と…キス…した…。
潤以外の人と…。
今になって、沸々と沸いてくる後悔と罪悪感。
俺はただ、力が抜けたまま溢れて来る涙を止められずにいた。