第36章 翔の家出
ー潤sideー
「うー…」
酷い頭痛がする。
やべー飲み過ぎた…。
頭を押さえながら起き上がると既に明るくて。
「え…もうこんな時間?」
今日の仕事は10時から。
時計は既に9時を回っていた。
「早く支度しないと…」
慌ててベッドを降り、ゲストルームを出た。
「翔?」
リビングはしんと静まり返っていた。
綺麗に整頓されたリビングとキッチン。
使った様子は無かった。
「翔?太陽?」
風呂場、トイレ、主寝室。
その何処にも誰も居なくて…虎鉄までもが居なかった。
「え…何で?」
寝ていたゲストルームに戻るとベッド脇のチェストに携帯と一緒にふたつ折りになったメモ紙が置かれていた。
それを取り、開くと殴り書きで…こう書かれていた。
『しばらく潤の顔見たくない。連絡もしないで 翔』
「嘘…だろ…?」
慌てて携帯を取り、翔に電話する。
プルルルル…プルルルル…
「何だよ翔…何が…」
プルル、プツッ、ツーツー…
「え…!?」
拒否られた…。
もう一度電話を掛ける。
『お掛けになった電話は…お客様の都合によりお繋ぎ出来ません。お掛けになった電話は…』
「………」
着信拒否…された…。
「………何事…?」
頭を押さえながら…昨日の出来事を考える。
でも思い出せない。
スタッフと飲んでる途中までしか記憶が…。
飲んでる…飲んだ…。
「飲んで来た事…怒ってた!!」
おぼろげに浮かび上がる…怒った翔の顔。
「あー…馬鹿だ俺…」
翔が怒るのも当たり前だ。
太陽が具合悪いのに翔に全部押し付けて飲んでたんだもんな…。
謝んなきゃ…。
でも仕事の準備…。
俺はまず急いで出掛ける支度をしてマネージャーが迎えに来るまで電話を掛けまくった。