第32章 Sexual harassment
ー和也sideー
AD「武誠治役の二宮和也さんです」
「宜しくお願いします!」
深く頭を下げると拍手で迎えられる。
9月中旬。
まだ暑い日差しの中、俺の主演ドラマが無事にスタートした。
最初はスタジオセットでの撮影。
特にNGもなく、順調に撮影は進み、休憩時間に入った。
「お腹空いたな…」
他の役者さん達と話をしながら俺は前室へと歩き出す。
『二宮くん』
振り返ると…そこには笑顔で微笑み掛ける中年の男性。
「あ…橋本さん。ご無沙汰してます」
今回のドラマの脚本家、橋本さんだった。
橋本「撮影見させてもらったよ」
スッと近付いて来る彼に一瞬怯んでしまう。
「あ…どうも…」
橋本「休憩時間にすまないね。ちょっと…さっきのシーンで気になる所があったもんだからさ…」
「あ…だったら監督が向こうに…」
橋本「君に言ってるんだよ。二宮くん」
そのザラッとした口調が…俺の背筋をひんやりさせる。
やだ…もう…。
「………はい…」
橋本「じゃあ向こうで話そうか。おいで」
「………」
橋本さんの手が…俺の腰に伸びる。
逃げようとしたけど…がっちり掴まれそれはかなわない。
橋本「行こう」
歩きながら…彼の手が…俺のお尻を撫で上げる。
俺は…グッとこらえながら彼に着いて行くしかなかった。
これ以上…エスカレートしない事を祈りながら…。