第31章 Full of more happiness
ー和也sideー
「う…ん…」
寝返りを打つと隣のスペースが空いているのに気付く。
目を開くと…眠ってる筈のさとしは居なかった。
「さと…?」
隣のベビーベッドも空で…。
俺はベッドを降り寝室を出た。
廊下の向こう、リビングへの扉が開いていた。
近付いて行くと…中から歌声がする。
俺の好きな…歌声。
そっと扉から顔を覗かせると…月明かりの中、智也を抱いてゆらゆら揺れながら鼻唄を歌う夫の姿…。
智「優しく笑う君が…この時間が空間が…泣きたくなる一番大事なものだよ…」
智の腕の中の智也は…まだ目も見えてないのに真っ直ぐに智を見つめていた。
ゆっくりとさとしに近付くと、俺に気付いたさとしが歌いながら優しく微笑み掛ける。
俺も微笑みながらさとしの隣に立った。
智「私にごめんねの返事を待たずに…優しくキスしたの…」
そのままそっと…俺達は唇を重ねる。
唇を離して智也を見ると…いつの間にかスヤスヤ眠ってた。
「ミルク…あげてくれたの?」
智「ん。なかなか寝ないからさ…ここであやしてた」
「俺がやるのに…」
智「今日退院したばっかで疲れてるだろ。いいよおいら明日休みだから」
「………ありがと」
智「おいらこそ。ありがとな…智也…産んでくれて」
「ん?」
智「かずが居て…智也が居て…おいら世界一幸せ者だ」
「さと…」
智「本当にありがとうかず」
「俺の方こそ…さとしが居なかったら父さんと会う事…一生無かったよ。この子も…喜んでる。こんな素敵な名前もらって。まだ100%許した訳じゃ無いけど…」
智「ゆっくりでいい。少しずつ…歩み寄ろうな」
「うん。ありがとうさとし…愛してるよ」
智「素直なかずも可愛いな」
「う、うるさいな…」
智「んふふ。おいらも愛してるよ」
そして月明かりの下、俺達はまた唇を重ねた。